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なぜ気づかないの?
彼は彼だけ 私も私だけ
恋は世界で一つ
くらべるものなんて どこにもない

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「ゆうべ、どこ行ってたの? 携帯出ないから家の電話に掛けた。朝にも掛けたよ」。
「寝てたから。朝は早く出たし……」。
「嘘つくな!」

聞いた事のない激しい声だった。
夜の影が、保阪の顔を暗く荒廃してみせる。
無精髭を生やした顔など今まで見たこともなかった。
眠れなかったのだろうか。
だが荒々しい態度はそこまで。
保阪は黙り込んだ由衣を悲しげにみつめると、「心配したよ」、と呟くように言う。
やさしい声だった。

健吾なら頬を叩くぐらいの事はやりかねない。
そんな喧嘩を幾度となくしては、仲直りを繰り返したものだ……。

「また比べてるんだ」。
ドキッとして見上げたが、保阪の目に怒りの色はなかった。

「三人でいるみたいだと思ってた。きみと僕の間に、もう一人誰かがいて、いつもそいつと比べられてるって。時間が経てば二人きりになれると思ってがんばったけど…無理みたいだね」。
「そうじゃないの、ただ私は……」。

由衣が言葉を探す間に、保阪の背中は遠ざかって行く。
もし健吾だったら……いや、去って行った保阪の背中を誰かに置き換えることはどうしても出来なかった。

一晩空けただけなのに、部屋の空気が冷え切っているように思える。
点滅する留守電、二件は保阪から。
三件目の無言も彼だろうか。
携帯に健吾からメールが入った。

「サンキュー。かなりよくなった。次のライブは招待するぜ」。

リビングの床にペタリと座ったまま動けずにいると、置き時計が小鳥の声でさえずった。

9時だ。少量の水で動く不思議な置き時計は保阪のプレゼントだった。
二人で説明書を読みながら時間を合わせたが、間違ってセットしてしまったアラームが何故か解除出来なかった。
だからあの時間、夜の9時に小鳥は毎夜さえずる。

この時間に僕を思い出すよう暫くこのままにしておこう、冗談めかして保阪は笑ったっけ。
お揃いのマグカップは、商店街の福引きで由衣が当てたものだ。三等賞。
気をよくして高い豆を奮発したから、返って高くついた。
そういえば、保阪との初めての諍いは、由衣の煎れたコーヒーに香りがないと文句をつけたられた時だった……。

たった二ヵ月。
でも、いつのまにか保阪との思い出を積み重ねていた。
なぜ気づかなかったのだろう。

保阪と健吾を比べたって何の意味もないことに。
健吾と過ごした自分と、今の自分は同じじゃない。
保阪にだって過去の恋愛はあるだろう。
だが、自分と保阪の過ごした時間は二人だけのもので、他の何かと比べることなんか出来なかったのに。

駅への道を急ぎながら、由衣はポケットのスマホを握り締めた。
何度掛けても保阪は出ない。
一度しか行った事のない彼の部屋、車で連れてって貰った部屋へうまく辿りつけるだろうか。
辿りつけたとして、会えるだろうか。
会えたとして……何て言えばいいの?

鼓動で胸が張り裂けそうだ。
次に何が起こるか予想出来ない不安はいつ以来だろう……ううん、今は今だけ。
いつかと比べることなんか出来ない。

ポケットの中の指が小さな塊に触れた。健吾の部屋の合い鍵。
取り出して一瞬みつめたそれを、由衣は思いっきり遠くへ放り投げた。

 

由衣  終わり

 

※転載元※ 婚活・女子会情報サイト【恋学】(http://koigaku.machicon.jp/)

楽しいだけじゃいけないと思った
ドキドキだけじゃ生きられないから
無邪気な夢や輝きを信じられなくなった私と
そんな私を信じられなくなったあなたと

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ヤバい、また目が合っちゃった。
お局にギロリと睨まれて、由衣は首をすくめる。と、
「佐々木さん、良かったらランチ一緒にどう?」
お局こと唐木美絵子は、表情を変えずに誘ってきた。

今朝——————
“ごめん。実は昨日やり残した仕事があって、もう会社なの。体調は戻ったから心配しないで”

マンションに向かっているという保阪に、苦しい嘘のメールを送った由衣は、健吾のアパートから、いつもと違う電車で出勤した。

そのせいで、まさかの目撃をしたのだ。

美絵子が明らかに年下と分かる男性に寄り添い、電車に乗り込んで来たのを…。
びっくりして、うじうじ抱えていた罪悪感も吹っ飛んでしまったくらい。
隠れるようにしていた由衣にお局が気づいたかどうかは分からない。だが、iPodのイヤホンを耳に差し込んだ男性に腕を絡ませていた彼女と、いつも通り隙のない佇まいでPCに向かうお局が重ならず、由衣は朝から何度も彼女を盗み見てしまった。

「弟、なんて言っても信じて貰えないわよね。あ~あっ、バレちゃった」。
美絵子は照れ臭そうに笑って、醤油ラーメンをツルツルッと啜る。
その表情も、子供っぽい食べ方も、由衣には新鮮に映った。
最寄り駅で財布を落として困っていた彼にお金を貸したのが始まり、だとか。
彼は役者志望で、たまにテレビにも出ている、とか。
どうやら半同棲のような生活をしているらしい。

「誤解されたくなくて友達にも話してなかったけど、誰かに話せてちょっと嬉しいかも」。
「誤解って?」
「貢いでるとか、騙されてるとか。佐々木さんだって思ってるでしょ?」
「そんな……。でも、結婚したいとか考えたりしないんですか?」
「ヤダ、いきなり直球」

美絵子は屈託なく笑う。

「もちろん考えるわよ。お見合いだってしたことあるし。でもさ、彼といるほどドキドキしないんだもん。だから、今はこれでいいかなって」。
「今は?」
「……将来の為に、今を犠牲にするなんてイヤ。彼とは結婚なんてムリだし、お局なんて言われていつまで働けるのかって考えないわけじゃないんだけど」。
でも彼と別れたくないから、自身に納得させるように言って、お局は箸を置いた。
ラーメンはまだ半分くらい残っている。

……「食わねぇの? 食ってやろうか?」

突如、食べるのが遅い由衣の鉢に、必ず手を伸ばしてくる健吾を思い出した。
「どうせ残すんだろ、貸せよ!」
「泥棒~アタシのラーメン食べないでよ」。
子供じみた言い争いも楽しかった。
楽しかったけど、あんな日々を続けてちゃいけないと思った。でもなぜ?
そういえば、健吾は枕元に置いてきた金で病院へ行ったろうか。
電話くらい掛けてくれたらいいのに……。

夜8時。残業を片付け、健吾に連絡しようか逡巡しながら1日ぶりの自宅に帰り着くと、マンションの玄関脇に長身の影が佇んでいた。保阪だった。

 

つづく

※転載元※ 婚活・女子会情報サイト【恋学】(http://koigaku.machicon.jp/)

どうして涙が出るの?
お気に入りだった家具も
ふざけて描いた似顔絵も
みんなみんな
とっくに色褪せた思い出なのに

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「どうしたの? 口に合わない?」
保阪が心配そうに聞いてくる。

リクエストしたレストランなのに、由衣は食がすすまなかった。
理由は分かっている。認めたくないが気になっているのだ。
風邪だと電話してきた健吾の事が。
“由衣にしか頼めなくて”という弱々しい声が、耳の奥に残って消えてくれない。

8時半。

健吾が、あれきり電話を掛けて来ないのも気にかかる。
よほど悪いのだろうか。
それとも、別れた由衣が来てくれないのは仕方ないと諦めたのだろうか。

少し熱っぽい、という嘘を保阪はすんなり受け入れてくれた。
健吾なら、
「せっかく連れて来てやったのになんだよう。無理してでも食えって!」
などとキレかねないシチュエーションなのに。

知らず知らず保阪と健吾を比べてしまう自分に、由衣は苛立つ。
だから、そんなだから、健吾とは別れたんじゃなかったの?

タクシーの中で、保阪はさりげなく由衣の手を握った。
「手は熱くないのにな」。
申し訳なさで言葉が出てこない。黙って俯いた頬に、
「大事にね。明日連絡入れるよ」。
優しい唇が触れてきた。

アパートを訪ねると、健吾は想像以上に衰弱し、痩せ細り、布団を被って震えていた。

汗まみれのジャージを着替えさせ、重湯を作ったり、買ってきた薬を飲ませたりして、由衣が一息ついたのは2時間も経ってからだった。

今、健吾は眉間に皺を寄せたまま眠っている。
それでも薬が効いたのか少しマシな顔色になったようだ。
由衣が入って来た時は、しわがれた声で、
「…マジわりぃ」、と言ったきり咳き込み、満足に口も聞けない状態だった。

洗い物でもしようと立ち上がると、靴箱の上に置いた合い鍵が目に入る。
“何度呼び鈴押しても出ないから焦っちゃった”
取りに行く荷物でもあったらと、捨てそびれていた合い鍵が今夜は役に立った。

忘れ物なんてないけど…改めて見回すと、部屋のあちこちに埃がたまっている。
こんなに狭かったっけ。それに、こんなみすぼらしかったかな。

お気に入りだった赤い冷蔵庫が随分色褪せて見える。
リサイクルショップから自転車で2人運んだ時はピカピカに見えたのに。

壁に貼ったいつかの悪戯描きが、半分剥がれて隙間風に揺れている。
健吾の描く得体の知れない珍獣と、由衣の定番びっくりウサギ…

やだ、なんで涙が出るの?
ばかみたい私ったら。なんで? おかしいよ。

…いつの間にか、健吾のベッドにもたれたまま眠っていた由衣は、メールの着信音で目を覚ました。
「おはよう。具合どう? 薬と朝食買ってマンションに向かってる。あと10分位で着くよ」

保阪からのメールだった。

 

つづく

 

※転載元※ 婚活・女子会情報サイト【恋学】(http://koigaku.machicon.jp/)

覚えてますか
陽当たりの悪いあの部屋 昼夜逆転の生活
夢を語り合ったシングルベッド
終わりがくるなんて 思ってもみなかった頃

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“今日7時いつもの場所で。行きたがってたイタリアン予約してあるよ”

来るかな、と思っていたメールが想像通り午前中に届いた。
幸せな気分が込み上げて、由衣は思わず笑顔になる。
「佐々木さん、なに笑ってるの? 資料打ち間違わないでよ」。
お局の小言だって、へっちゃら。

旅行会社に勤める保阪とは、「マリッジ エデン」に入会して三度目のお見合いで知り合った。
交際二ヵ月。
結婚相談室なんてと最初は抵抗があったけど、こんな出会いがあるなら
もっと早く入会すれば良かったって思うくらい。

保阪と付き合って良かった点の一つが、こうして彼の方から先にメールをくれる事だ。
イライラしない。いつだって安心。

健吾など、こちらが3回くらい送ってやっと返信をよこす。
ひどい時など、料金延滞で携帯が止まっていたりするし、向こうから送って来たと思えば、頼み事のある時だけだ。
先月は、いきなり一万円貸してくれなんて図々しく言ってきた。
勿論、冷たく断ったけど。

健吾は半年前に別れた元彼。
大学時代の合コンで知り合い、6年間付き合った。
ミュージシャン。
メジャーを目指す彼のファンでもあったし、ライブハウスで歌う健吾が
誇らしい時だってあった。
陽当たりの悪いアパート、時々止まる携帯、昼夜逆転の生活。
それでも、あの頃は楽しかった。
小さいベッドで重なるように眠ったり、朝までビデオを観たり。

由衣の母が広島から上京した時、慌てて茶髪に黒いスプレーをかけて挨拶したのも、当時は2人のお気に入りの、面白おかしい出来事だった。

だが年月が経ち、OL生活も身についた由衣と、30才を目前に変わらぬバイト生活を続ける健吾の間には溝が出来ていった。

保阪と会うと、由衣は、心が平和で満たされるのを感じる。
約束を反故にされることが、まずない。
食事代の心配もなければ、音信不通で振り回されることもない。
友達の恋人と同じように、記念日には特別なディナーに誘ってくれるし、プレゼントもくれる。
連休には旅行の計画だってある。

保阪といれば、突然眉毛を剃って現れたり、喫茶店で態度の悪いウェイターに水をぶっかけたり、そんな心臓に悪い出来事なんて金輪際起こりっこないのだ…。

いきなり変えたばかりのスマホから脳天気な音楽が流れた。
お局を気にして名前も確かめずに出ると、金の無心以来スルーしていた健吾だった。

「風邪ひいちゃってさあ。ちょっと参ってんだよぉ」。

切ろうとした耳に、大きなくしゃみ、そして激しい咳き込みが続き、
「昨日から何にも食べてないんだ。会社終わったら来てくんない? 由衣にしか頼めなくてさぁ…」。

柄にもない弱々しい声がすがってくる。
戸惑いながら目を上げると、お局がまだ睨んでいた。

つづく

 

※転載元※ 婚活・女子会情報サイト【恋学】(http://koigaku.machicon.jp/)

やさしいことばを持っている
案外正義感が強い 心配性
嬉しいとマバタキが多くなる事も
恋をして知った 新しい自分
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「やっぱり行けない。彼から聞いたんでしょ?」

メールは曜子からだった。
レモン色の傘は横断歩道の向こうに止まったままだ。

「何の事?とにかくおいでよ」
「うそつき。聞いたくせに」
「会って話そう」
「無理だよ。なんで怒らないの?」

「それは」、
と打とうとしてメール画面がおかしくなった。
焦って変な所を触ってしまったらしい。
こんな事なら流行りのLINEでも始めておけばよかった。
慌てて画面を戻し、「それは…」と入れた所に、次のメールが来た。

「ごめんね。ありがとう」

レモン色の傘が踵を返して去って行く。
治樹は伝票を掴んで立ち上がった。グラスが倒れ、テーブルが水浸しになった。

吉岡から電話があったのは、例のパーティの翌日だった。
「あの子はやめとけよ。ストーカーだから」

曜子が吉岡と付き合っていたなんて、真っ赤な嘘だと言う。
「お茶ぐらいは飲んだけどな。仕事頼んでたし、話があるとか言われてさ」

一方的に吉岡を好きになった曜子が追いかけ回していたらしい。
メールが山のように来たり、待ち伏せされたりした。
無視していたら、パーティに偽名で申し込んで来て…。

なんで怒らないか?それは…。
彼女を探して走りながら、治樹は打てなかったメールの続きを反芻した。

「それは、好きになったから」

はじめて、「好き」という気持ちが分かったから。

曜子が吉岡にまだメールを出していることも知っていた。
自分と付き合うのは、彼への当てつけなのだろうと薄々感じてもいた。
でも会いたかった。会えればそれでよかった。
37才にもなってどうかと思うが、そういった気持ちの全部を、彼女のお陰で知ったのだ。

“だから俺は怒ってなどいない”

治樹は走り続けた。
自分を濡らしているのが雨なのか、汗なのかさえ分からなくなっていた。

横断歩道を渡り、路地を抜け、商店街を過ぎたあたりで、前の角を曲がっていく彼女をみつけた。
速度をあげる。
もう少しで追いつきそうだ。

「曜子!」

夢中で叫んだ。

と、ちらっと振り返った彼女が駆けだした。
瞬間、鋭いブレーキ音が辺り一面に響き、治樹は思わず足を止めた。
その足元にレモン色の傘が、ふわりと飛んで来た。

まさか…

前方に目をやった治樹は、安堵の息を吐いた。
転んだ曜子が膝を押さえ半身を起こすのが見えたのだ。
大股で近づいて行った治樹の口から、予定外の激しい怒声がこぼれた。
「何やってんだよ!走るんなら前見て走れよ!」

好きになると本気で怒ったりもするらしい。

曜子は、「立たせて」というように右手を黙って差し伸べた。
おわり

 

※転載元※ 婚活・女子会情報サイト【恋学】(http://koigaku.machicon.jp/)

初めて手をつないだ日
花模様の傘をくるくる回しながら歩いた
キスした夜に聞いた初恋の思い出
いつか俺も 君の思い出になるんだろうか ふと そんなことを考えた

0313

 

治樹はカフェの窓際に座り、横断歩道の向こうをみつめている。
冷たい雨の午後。だが、治樹の心は暖かい。
カフェモカとカフェラテを間違ったウェイターにさえ、腹も立たない。
レモン色の傘を差した曜子が小走りに来るのが見えると、
治樹は我知らず微笑んだ。
彼女が、自分に会うために急いでいることが、ただ嬉しくて。

あの日…
二人がパーティ会場に戻ると、スタッフは外に出て、荷物を車に運び入れている所だった。
近寄ってきた治樹と曜子に危機感を持ったか、吉岡は、
「どうした?」と尋ねながら、二人を駐車場のはずれに連れて行こうとした。

「吉岡さん、俺…」
口火を切ったものの後の言葉が続かない。と、横から、
「私たち付き合うことにしたの。パーティ来てよかった、ありがと!」
曜子が吉岡を睨みつけるようにして言い、踵を返した。
治樹は慌てて後を追い…。

その後、イタリアンレストランで乾杯した。
「俺が言ってやるなんて啖呵きったのに、カッコ悪かったよなあ」。
謝る治樹に曜子は、
「乾杯」
とワイングラスを合わせてきた。
「事情全然知らないのに、何を言うつもりだったの?」
「だって先輩…アイツは、結婚してるのにきみを…」。
「それは私だって悪いもん。彼のせいじゃない」。
その言葉に、なんとなく治樹は傷ついた。
彼女のために吉岡を責めようとして、反対に自分が責められたようで。

だが帰り道、曜子は言った。
「ほんとはね、私のために怒ってくれて、すっごい嬉しかった」。
そして、背伸びして治樹の首に両手をかけ、キスしたのだ。
ワインの匂いがする一瞬のキスを、その後治樹は何度思い返しただろう。
初めてキスした高校生かよ! お前は…。
自分でツッコミを入れながら。

あれから1ヵ月。
「ほんとに俺と付き合ってくれないか」。
メールすると、
「わたしでよければ」。
ひらがなばかりの短いメールが返って来た。
一度目のデートは映画を観に行った。
今日は2回目のデートで、友人のライブに連れて行く約束だ。

信号が変わり、傘の群れが動き始める。
ところがレモン色の傘は動かなかった。
群れが方々へ散らばり、信号が再び点滅を始めても止まったままだ。
「…?!」
突然、テーブルに置いた携帯電話がメール着信を告げて震えた。

>>つづく

 

※転載元※ 婚活・女子会情報サイト【恋学】(http://koigaku.machicon.jp/)

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短い時間に くるくる表情を変える彼女
きみが泣くと なんで俺の胸が痛くなるのか
わからなかった 気づかなかった
いつのまにか恋がはじまったことさえ
「私って魅力ないですよね?」

彼女が再び泣き出した時、治樹は胸が締め付けられる様な思いに襲われた…。

婚活パーティ終わりの会場で治樹を誘ってきた彼女、菊原曜子は、走り去ろうとして、
片付け中のコードに足をひっかけ、マンガのように盛大に転んだ。

治樹は仕方なく彼女を助け起こし…結局成り行きで、こうして二人
向かい合ってお茶を飲む事となった。

30才。ビデオ制作会社の照明スタッフとして働いて3年目。
自己紹介した曜子は、さっきはごめんね、と言いながら、ポケットティッシュを
取り出し、音をたてて鼻をかんだ。
かと思うと、赤い鼻のまま「きゃっ、汚れてる!」と、転んだ折、ワンピースに
ついた汚れを布巾で拭き始める。
落ち着きのない、子供っぽい女、というのがまず第一印象。

だが、治樹が学生時代バンドをしていたと言った途端、目を輝かせた。
会社に勤める前まで、曜子もデビューを夢見てバンドのボーカルをしていたと言う。

バンドをあっさり辞めた治樹だが、音楽は好きだから久しぶりに詳しい人間と
話すのは楽しかった。
気がつくと、身を乗り出し、前からの友達のように意気投合して話していた。

そのリラックスした気持ちのまま、
「なんであんな風に泣いたの? 残り物の俺にまで振られたから?」
と、尋ねた。からかうような調子で。

だが一瞬黙り込んだ曜子の打ち明け話は、からかえるような内容ではなかった。

「奥さんのいる人を好きになって、結局振られて…パーティに出たのは復讐だったの。なのに、みっともない結果になっちゃって」

「私って魅力ないですよね?」

この世の終わりのように泣く子だなあ、新しい発見だった。
彼女がしゃくり揚げる度に、こっちまで泣きそうになる。
他人の悲しみで貰い泣き? 俺にもそんな所があるなんて!

…だが今日の新発見はそれだけで終わらなかった。

「復讐ってどういうこと?」

「あのパーティを主催してるご夫婦のね、旦那さんなんだ、別れた彼。1年くらい前、宣伝用のビデオを作る仕事で知り合ったの」。

「…夫婦って、よ、吉岡さんのこと?」

なんということだろう。

パーティにサクラとして治樹に参加を頼んできた、元先輩の吉岡が?!

それが事実なら、吉岡は、曜子がパーティに参加してきた事をどう捉えていたのだろう。
号泣し、転んだ彼女を治樹が送っていく事になった時、何故あんなに平然とした態度が取れたのか?!

怒りがむらむらと湧いてくる。
それがもう一つの発見だった。

彼女を思い、おさえられない程の怒りを感じる熱い自分…。

「行こう。俺がアイツに言ってやる」

治樹は、驚く曜子の腕を強く掴んで立ち上がった。
>>つづく

 

※転載元※ 婚活・女子会情報サイト【恋学】(http://koigaku.machicon.jp/)

 

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はっきり言葉にして なんて言われると、
ますます心が見えなくなる そもそも
好きってどんな気持ち?

俺、なんでこんな風になっちゃったんだろ…。
このごろ治樹は自問自答することが多くなった。

37才。独身、彼女いない歴かれこれ3年。この俺が…?

言っちゃなんだが顔は整ってる方だし、背も高い。
収入だって普通よりちょっと多い位だと思う。それなのに。

高校時代は野球部でそこそこ人気があった。
大学では、バンド活動をしており、ライブの時には治樹目当ての女子が結構来た。
その中の数人とは付き合ってもみた。
恋人に不自由するなんて考えたこともなかった。それなのに。

相談室「エデン」主催の婚活パーティは終了し、スタッフが片付けを始めている。
カップル成立は3組。
彼らは手を繋いで会場を後にし、他の男女も順次消えて行った。
女性同士で帰る者、カップル成立にならなかったのに、なぜか男女4人の
グループで二次会に向かうらしい連中もいた。

「今日は悪かったな。片付けたらスタッフで飲むからお前も参加しろよ」。

マイクコードを巻きながら、吉岡が声を掛けてくる。
会社の先輩だった吉岡は、3年前、退職して妻と婚活会社を起ち上げた。
今日のパーティには“サクラ”として、彼に頼まれ参加したのだ。

「“サクラ”だから、カップル成立なんて真剣に考えてなかったし…」。
そう心に言い訳するが、どの女性とも思うように話せなかった事で、
実は治樹は動揺していた。
しどろもどろ。緊張!? まさか、好きでもないのに。

いや、そもそも好きってどういう事だったっけ?

大学卒業後は、バンドを続ける仲間に別れを告げ、旅行会社に就職した。
音楽で生きていける才能があるとは思えなかったし、そこまで音楽を
愛してもいなかった。
物事に執着しないたちなのか、怪我が元で野球を辞めたときも、そんなに
落ち込まなかった気がする。

「私じゃなくてもいいんでしょ」。

学生時代からの恋人・奈津子は最後に言った。
コンパで知り合った相手で気は合ったけど、彼女でなくては
いけないかどうか、考えると分からなくなった。

「はっきりしてくれないなら、もう会わない」。

3年前、彼女だった百合恵はそう言って去った。
上司の紹介、容姿も性格もタイプだったが、「はっきり」を先延ばしに
しているうちに、別の男と結婚してしまった…。
「あの、良かったら一緒に帰りませんか?」

振り返ると、小柄な女性が見上げていた。
ショートカット、きつめの顔立ちにピンクのワンピースがいまいち馴染んでいない。

「いいじゃん、余り者同士で」。

言い方にカチンと来た。

「俺、用があってここで待ってるんで」。

次の瞬間、異変が起こった。
彼女の顔が真っ赤になったかと思うと、くしゃくしゃに崩れ、目から大粒の涙が溢れだしたのだ。

>つづく

 

※転載元※ 婚活・女子会情報サイト【恋学】(http://koigaku.machicon.jp/)

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知っていますか
傷つくことより 失うことの方が
何倍も 何十倍も 悲しいってこと

「近くまで来た」というのが口実でなく、本当にモデルルームの傍まで
仕事で来たという所が何だか癪に障る。
貴史ほど格好良くないのも気にいらない。
だが、藤倉とは不思議に会話が途切れなかった。

数回2人で会う内に、随分前から知り合いだったような感覚になっていた。
だが黎子は、尚美に言われた“恋の鉄則”を忘れていない。
同じ過ちは嫌だ。

間違っても藤倉に執着しない為に、「エデン」を介して見合いもした。
最初の1人は会話のつまらなさに辟易したが、今夜の水野はスマートだし、
話も上手で笑わせてくれる…。
前菜を食べ始めた時に再びメール着信があったが、そのままにした。
帰宅後、開いたメールにはこうあった。

「会って話したい事があるんだ」。

来週末は、水野との次回デートの予定がある。
迷ったあげく、その日は無理、と返信した。
しばらく会っていない藤倉に話したい事が溜まっている。
でも即座に返信したり、ホイホイついて行けば甘く見られるかもしれないから…。

心が動きそうになる度、
「男性を安心させちゃいけない」
という尚美の言葉を思い出す。
彼女の耳に揺れていたピアスが、危険信号みたいに頭の中で煌めく。

ところが、その尚美が突然結婚するという。

「私からプロポーズしちゃったんです」。

不満げな黎子の気持ちを察したように、
「ほんとに好きになったら鉄則なんて考える余裕ないんですね」。
尚美は、照れ臭そうに笑った。

「何考えてるの?さっきからボーッとして」。

貴史が顔をのぞき込んでくる。
連絡を取らないでいると、彼の方から電話やメールが来た。
会ってみると、貴史は優しかった。
だが黎子の心はときめかない。
気づくと、二週間近く連絡の途絶えた藤倉の事を考えている。

シーソーみたい。思わず溜息が漏れた。
こっちが上がると向こうは下がって、こっちが背中を向けると…
藤倉は私に背中を向けたんだろうか?
ふいに、息が出来ない程の悲しみが襲ってくる。

その時、携帯が藤倉からのメール着信を告げて震えた。

「夕方の新幹線で大阪に行きます。急に転勤することになり、何年かは向こうなので、その前に話がしたかったけど残念。身体に気をつけて」。

けたたましい音が喫茶店中に響き渡った。
黎子が突然立ち上がった拍子に、椅子が倒れて転がったのだ。

「何時の新幹線? すぐ追いかけるからどこかで会える? 会いたいです」。

タクシーの中で返信した。
会いたい…何十回でも伝えたかった。
鉄則なんて!黎子は自分の頬をひっぱたきたくなる衝動に駆られている。
シーソーだって構わない! 私の愛が彼より重くて何が悪い?
背中を向けたら前に回って呼びかければいい!
このまま藤倉を失う事に比べれば、傷つく事なんか何でもないではないか。

夕陽が街をオレンジ色に染めていく。

黎子は、ただ真っ直ぐ前を見つめている。
あの角を曲がったら駅はもうすぐだ。

 

~黎子 終わり~

 

※転載元※ 婚活・女子会情報サイト【恋学】(http://koigaku.machicon.jp/)

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