1. 婚活TOP
  2. 婚活コラム
  3. 「さえずる時計<由衣 ④>」【ショートストーリー】恋してみたら? ★婚活コラム ~その3~★
今すぐ結婚したくなる♥最近の婚活事情♪婚活コラム

「さえずる時計<由衣 ④>」【ショートストーリー】恋してみたら? ★婚活コラム ~その3~★

2014/03/27

なぜ気づかないの?
彼は彼だけ 私も私だけ
恋は世界で一つ
くらべるものなんて どこにもない

8316911757_a71724dbde_o

「ゆうべ、どこ行ってたの? 携帯出ないから家の電話に掛けた。朝にも掛けたよ」。
「寝てたから。朝は早く出たし……」。
「嘘つくな!」

聞いた事のない激しい声だった。
夜の影が、保阪の顔を暗く荒廃してみせる。
無精髭を生やした顔など今まで見たこともなかった。
眠れなかったのだろうか。
だが荒々しい態度はそこまで。
保阪は黙り込んだ由衣を悲しげにみつめると、「心配したよ」、と呟くように言う。
やさしい声だった。

健吾なら頬を叩くぐらいの事はやりかねない。
そんな喧嘩を幾度となくしては、仲直りを繰り返したものだ……。

「また比べてるんだ」。
ドキッとして見上げたが、保阪の目に怒りの色はなかった。

「三人でいるみたいだと思ってた。きみと僕の間に、もう一人誰かがいて、いつもそいつと比べられてるって。時間が経てば二人きりになれると思ってがんばったけど…無理みたいだね」。
「そうじゃないの、ただ私は……」。

由衣が言葉を探す間に、保阪の背中は遠ざかって行く。
もし健吾だったら……いや、去って行った保阪の背中を誰かに置き換えることはどうしても出来なかった。

一晩空けただけなのに、部屋の空気が冷え切っているように思える。
点滅する留守電、二件は保阪から。
三件目の無言も彼だろうか。
携帯に健吾からメールが入った。

「サンキュー。かなりよくなった。次のライブは招待するぜ」。

リビングの床にペタリと座ったまま動けずにいると、置き時計が小鳥の声でさえずった。

9時だ。少量の水で動く不思議な置き時計は保阪のプレゼントだった。
二人で説明書を読みながら時間を合わせたが、間違ってセットしてしまったアラームが何故か解除出来なかった。
だからあの時間、夜の9時に小鳥は毎夜さえずる。

この時間に僕を思い出すよう暫くこのままにしておこう、冗談めかして保阪は笑ったっけ。
お揃いのマグカップは、商店街の福引きで由衣が当てたものだ。三等賞。
気をよくして高い豆を奮発したから、返って高くついた。
そういえば、保阪との初めての諍いは、由衣の煎れたコーヒーに香りがないと文句をつけたられた時だった……。

たった二ヵ月。
でも、いつのまにか保阪との思い出を積み重ねていた。
なぜ気づかなかったのだろう。

保阪と健吾を比べたって何の意味もないことに。
健吾と過ごした自分と、今の自分は同じじゃない。
保阪にだって過去の恋愛はあるだろう。
だが、自分と保阪の過ごした時間は二人だけのもので、他の何かと比べることなんか出来なかったのに。

駅への道を急ぎながら、由衣はポケットのスマホを握り締めた。
何度掛けても保阪は出ない。
一度しか行った事のない彼の部屋、車で連れてって貰った部屋へうまく辿りつけるだろうか。
辿りつけたとして、会えるだろうか。
会えたとして……何て言えばいいの?

鼓動で胸が張り裂けそうだ。
次に何が起こるか予想出来ない不安はいつ以来だろう……ううん、今は今だけ。
いつかと比べることなんか出来ない。

ポケットの中の指が小さな塊に触れた。健吾の部屋の合い鍵。
取り出して一瞬みつめたそれを、由衣は思いっきり遠くへ放り投げた。

 

由衣  終わり

 

※転載元※ 婚活・女子会情報サイト【恋学】(http://koigaku.machicon.jp/)

婚活コラム マンガでわかる!!婚活の実態 婚活マンガ「まちおくん」
処理中です